事件番号:JP2012-0001 裁 定 申立人:(名称)コーチ・インコーポレーテッド (住所)アメリカ合衆国 ニューヨーク州 10001 ニューヨーク、 ウエスト・サーテイフオース・ストリート 516番 電話番号:1-212-629-2217 ファクシミリ番号:1-212-615-2541 電子メールアドレス:cjlegal@coach.com 代理人:弁護士 宮川 美津子 (送達場所)〒106-6123 東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所 電話番号:03-6438-5511 ファクシミリ番号:03-6438-5622 電子メールアドレス: Mitsuko_Miyagawa@tmi.gr.jp 代理人:弁理士 佐藤 俊司 東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所 電話番号:03-6438-5511 ファクシミリ番号:03-6438-5622 電子メールアドレス:Shunji_Sato@tmi.gr.jp 代理人:弁護士 佐藤 力哉 東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー23階 TMI総合法律事務所 電話番号:03-6438-5511 ファクシミリ番号:03-6438-5622 電子メールアドレス:Rikiya_Sato@tmi.gr.jp 登録者:ネットオウル株式会社 (送達場所)住所:〒604-8006 京都市中京区河原町通三条上る下丸屋町403番地 FISビル 7F 電話番号:075-256-8553 電子メールアドレス:whois@netowl.jp 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、 JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センター JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立 書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。 1.裁定主文 ドメイン名「COACH-OUTLETS.JP」及び「COACH -FACTORY.JP」の登録を申立人に移転せよ 2.ドメイン名 紛争に係るドメイン名は「COACH-OUTLETS.JP」(以下本件 ドメイン名1という。)及び「COACH-FACTORY.JP」(以下本件 ドメイン名2という。)(以上本件ドメイン名1と本件ドメイン名2を併せて本 件各ドメインという。)である。 3.手続の経緯 日本知的財産仲裁センターは、申立人の申立書を2011年12月27日に 書面で受領した。センターは、申立書が社団法人日本ネットワークインフォー メーションセンター(JPNIC)のJPドメイン名紛争処理方針(方針)、J Pドメイン名紛争処理方針のための手続規則(規則)、JPドメイン名紛争処理 方針のための補則(補則)の形式要件を充足することを確認した。申立人はセ ンターに対して規定料金を支払った。この紛争手続の開始日は2012年1月 5日である。 2011年12月28日に、センターは、本件に関してドメイン名及び登録 者の確認を、株式会社日本レジストリーサービス(JPRS)に電子メールで 行った。2011年12月28日に、JPRSは、申立書に記載の登録者がド メイン名の登録者であることを確認し、ドメイン名照会に対する通知を電子メ ールでセンターに電送した。 申立書が方針及び規則を充足することを確認してから、センターは、201 2年1月5日に、申立書及び関連の証拠並びにJPドメイン名紛争処理方針を 登録者に郵送した。 センターは、答弁書の提出最終期限日が2012年2月3日であることを通 知した。 登録者は、答弁書を上記提出期限までにセンター宛て提出しなかった。セン ターは2012年2月6日に、答弁書不提出通知書を登録者に送付した。 なお登録者は、2012年1月18日付けでセンターに「回答書」を送付し、 本件各ドメインは、登録者のユーザーが「スタードメイン」にて、「Whois代 理公開サービス」を利用して取得したドメインであり、登録者はドメインの運 用に一切関与していない旨の回答をしてきている。 しかしながら「JP ドメイン名紛争処理方針」は、登録者が登録したドメイ ン名の登録と使用から発生する、登録者と第三者との間のドメイン名に係わる 紛争処理に関する規約を定めたものであり、ここで適用対象となる紛争は、「第 三者(以下「申立人」という)から、手続規則に従って紛争処理機関に対し、 以下の申立があったときには、登録者はこの JP ドメイン名紛争処理手続に従 うものとする。」とし、「(i) 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当 な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似してい ること、(ii) 登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有 していないこと、(iii) 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使 用されていること」を理由とする申立が有った場合には、登録者と第三者(申 立人)が紛争当事者になる。 また、前記JP ドメイン名紛争処理方針第2条では 「第2条 登録者による告知および告知義務違反 登録者は、ドメイン名の登録申請に際し、またはその維持・更新にあ たり、JPRS に対し以下のことを告知する。 (a) 登録申請書に記載した陳述内容が、完全かつ正確であること (中略) 上記いずれかの事項が事実でなかった場合、登録者は本方針に従って当該ド メイン名登録の移転または取消を受ける場合があることに同意する。」と規定し ている。 以上より、本件各ドメインの登録の当事者として、前記登録者を紛争の当 事者として扱うことにつては、特に問題が無いものと考える。 2012年2月10日に、単独パネリストの申立人の指定に照らして、セン ターは本件のパネリストとして弁護士渡邊敏に要請書を送付した。 2012年2月17日に、弁護士渡邊敏の受諾書及び公平性及び独立性の宣 言書を受領してから、センターは、弁護士渡邊敏が単独パネリストとして正式 に指名されたとする紛争処理パネルの指名及び予定裁定日の通知を当事者に送 った。予定裁定日は2012年3月1日であった。単独パネリストは、紛争処 理パネルが、規則及び補則に従って適正に構成され且つ指名されたことを認定 する。 紛争処理パネルは、申立書、提出された証拠、方針、規則及び補則に基づい て裁定を下さなければならない。 4. 事実 登録者が答弁書を提出しなかったので、申立人が主張する事実のうち、パネ リストが相当であると思量する事実をここに摘示する。 (1) 申立人について ① 申立人の関係する登録商標について 申立人は、日本において、商標「COACH」(以下本件商標という。)を、 ハンドバックその他のかばん類、被服及び金属製金具等を含む商品並びに当該 商品に係る小売等役務等について登録商標を保有し、また、枠付の本件商標や、 本件商標と馬車のマークを組み合わせた商標、本件商標の頭文字である「C」 の文字をあしらった商標等、本件商標に関連する登録商標を保有している (ア) 商標登録第0476313号(甲3の1及び2) 商標 COACHとコーチの二段標記 登 録 日 昭和31年1月31日 出 願 日 昭和30年3月30日 商品区分 第24類(書換後) 指定商品 ハンカチ、タオル等 商品区分 第25類(書換後) 指定商品 洋服、コート、バンド、ベルト等 (但し当初の権利者は株式会社三陽商会であり、申立人は平成1 3年6月15日に移転登録を受けている。) (イ) 商標登録第1980347号(甲4の1及び2) 商標 白抜きのCOACHの外側に額縁風の枠の有 るもの 登 録 日 昭和62年8月19日 出 願 日 昭和60年4月5日 商品区分 第18類(書換後) 指定商品 ハンドバック、その他のカバン類 (但し申立人は平成13年6月15日に移転登録を受けている。) (ウ) 商標登録第3108383号(甲5の1及び2) 商標 COACH 登 録 日 平成7年12月26日 出 願 日 平成4年8月28日 商品区分 第18類 指定商品 ハンドバック、その他のカバン類、 カード入れ、財布、その他の袋物他 (但し申立人は平成13年6月15日に移転登録を受けている。) (エ) 商標登録第3108386号(甲6の1及び2) 商標 白抜きのCOACHの外側に額縁風の枠の有 るもの 登 録 日 平成7年12月26日 出 願 日 平成4年8月28日 商品区分 第18類 指定商品 ハンドバック、その他のカバン類、 カード入れ、財布、その他の袋物他 (但し申立人は平成13年6月15日に移転登録を受けている。) (オ) 商標登録第4589472号(甲7の1及び2) 商標 2個の「C」のマークを上段は左に上向き、 右に左右に向き合い転倒したもの、下段は、左に左右に向き合ったたもの、 右に下向きになったもの合計で8個の組み合わせ 登 録 日 平成14年7月26日 出 願 日 平成13年6月27日 商品区分 第18類 指定商品 ハンドバック、バック等、 カード入れ、財布、袋物他 (カ) 商標登録第5212037号(甲8の1及び2) 商標 COACH 登 録 日 平成21年3月6日 出 願 日 平成19年9月21日 商品区分 第35類 指定商品 かばんの小売、被服の小売他 (キ) 国際登録第930091A(甲9の1及び2) 商標 上段に馬車と馬下段に白抜きのCOACH の外側に額縁風の枠の有るもの 登 録 日 平成20年12月12日 出 願 日 平成19年2月1日(米国優先権) 商品区分 第18類他 指定商品 旅行かばん、財布、ハンドバック他 以上の商標は、本件商標「COACH」と無関係のものもあるが、 共通点は、本件商標「COACH」を基本的な構成とした商標である。 その他、甲10によれば、申立人は「COACH」商標を相当程度 保有していると認められる。 ② 申立人の本件商標「COACH」の著名性について 申立人は、1941年に、米国ニューヨークのマンハッタンのロフト にある工房にて創業し、革製品・貴金属製品その他様々な身飾品・装飾品等の 創造・販売等を行なう事業者であって、申立人の製品は、「COACH」の名と ともに、その品質・耐久性・機能性・スタイルが品質の高いものである(甲1 6の1及び2)。 申立人は、1988年に日本初の店舗を東京にオープンさせて以来、現在日 本において全国各地に直営店171店舗を有するに至っている(甲16の1)。 申立人は、各種雑誌・事典等においても多く取り上げられている(甲17の 1から8まで)。 また、申立人は、世界各国で商標に関する権利を取得しており、①で前述し た日本国内でも同様である。 そして、申立人は本件商標を申立人の製品に使用しており、例えば枠付の本 件商標の施されたタグは、バッグ等に付されているなど、申立人のブランドイ メージを向上させている(甲16の2、甲17及び甲18など)。 以上より、申立人の所有する本件商標である「COACH」は、申立人を 示すものとして著名である。 5. 当事者の主張 (1)申立人 申立人は、本件商標について正当な権利利益を有するものであるが、① 本件商標と本件ドメイン名1及び本件ドメイン名2は、客観的に、混同を生ぜ しめるほどに類似しており、 ②登録者は、本件ドメイン名1及び本件ドメイン名2に関係する権利ま たは正当な利益を何ら有していないにもかかわらず、登録者は、本件ドメイン 名1及び本件ドメイン名2を登録しており ③登録者は商業上の利益を得る目的で、本件商標と混同を生ぜしめるほ どに類似している本件ドメイン名1及び本件ドメイン名2によりインターネッ ト上のユーザーに誤認混同を生ぜしめて本件ドメイン名1及び本件ドメイン名 2を使用したウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)に誘引等する という不正の目的がある。 よって、申立人は、紛争の対象であるドメイン名の登録について、移転の 裁定を下すことを求めている。 (2)登録者 答弁書を提出していないが、回答書では、本件各ドメインは、登録者の ユーザーが「スタードメイン」にて、「Whois代理公開サービス」を利用して 取得したドメインであり、登録者はドメインの運用に一切関与していないと主 張している。 6.争点および事実認定 (1).争点について 登録者は、申立人の主張に対して、特に反論しなかったが、規則第5 条(f)は、「もし登録者が答弁書を提出しないときは、例外的な事情がない限 り、パネルは申立書に基づいて裁定を下すものとする。」と規定している。した がって争いのない事件については、申立人の主張通り、移転の裁定を下すこと が妥当と考える。 (2)ところで、本件について仮に争いがあるとすると、規則第15条(a) は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっている原則についてパネ ルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳述及び文書の結果に基づき、 方針、規則、及び適用されうる関係法規の規定、原則ならびに条理に従って、 裁定を下さなければならない。」 方針第4条aは、申立人が次事項の各々を証明しなければならないことを指 図している。 ① 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標 その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること ② 登録者が、ドメイン名に関係する権利又は正当な利益を有していない こと ③ 登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること したがって、以上の①から③について申立人の主張について検討する。 ア. 同一又混同を引き起こすほどの類似性について (ア)本件ドメイン名1について 本件ドメイン名1である「COACH-OUTLETS.JP」のうち、まず「.JP」の 部分はトップレベルドメインであって国別コードの日本を意味し、使用主体が 属する国を表示するものに過ぎないので、商標の要部は、 「COACH-OUTLETS」 である。 ところで、本件ドメイン名1のうち「COACH-OUTLETS」は、中間にハ イホン「-」があるところから、前半の「COACH」と後半の「OUTLETS」 に分断されて称呼されるかを考察することにする。 後半の「OUTLETS」のうち、「OUTLET/アウトレット」は、一般に、メ ーカー直営型の安売り店形態を「アウトレット・ストア」と呼び、工場直販店 を「ファクトリー・アウトレット」、アウトレット・ストアを集積したショッピ ング・センターを「アウトレット・モール」と呼んでいる(甲11)ので、し たがって、「アウトレット」という文言は、メーカー直販店という意味を有する ものであり、メーカー直販店という形態における商品の販売に関する表示とし てありふれたものである(なお、申立人の日本に係るウェブサイトにおいて申 立人の商品が「アウトレットといった直営店の他、有名百貨店、専門店」等に おいて取り扱われている旨表示している(甲12)。現に埼玉県入間の三井アウ トレットには、申立人の直営店と思われる店舗が存在する。したがって、 「OUTLETS」の部分は識別力が希薄な部分である。 以上より、申立人の商標である「COACH」と本件ドメイン名1のうち 「COACH-OUTLETS」を対比すると、本件ドメイン名1は冗長であり、しか も「OUTLETS」の識別力が希薄であることから、前半の「COACH」と後半 の「OUTLETS」が分断されて称呼されることが多く、又、本件ドメイン名1 の前半の部分は、本件商標「COACH」とは同一又は類似のものである。 以上より、本件ドメイン1の「COACH-OUTLETS.JP」は、本件商標に、 全体として、混同を起こすほど類似していることは明らかである。 (イ)本件ドメイン名2について 先ず、本件ドメイン名2である「COACH-FACTORY.JP」のうち、まず「.JP」 の部分はトップレベルドメインであって国別コードの日本を意味し、使用主体 が属する国を表示するものに過ぎないのであり、商標の要部は、 「COACH- FACTORY」 である。 ところで、本件ドメイン名2のうち「COACH-FACTORY」は、前半の 「COACH」とハイホン「-」に続く後半の「FACTORY」に分断されるかを 考察することにする。 後半の「FACTORY」とは工場を意味し、通常、メーカー直販システムにお ける「工場直販店」を「ファクトリー・アウトレット」、メーカーの工場(ファ クトリー)の在庫品を売り出すという意味のメーカー直販型の在庫処分店を「フ ァクトリー・クリアランス・ストア」(あるいは、これも「ファクトリー・アウ トレット」)と呼んでいる(甲11)。したがって、「FACTORY/ファクトリー」 という文言は、商品の販売に関してメーカーの生産工場を意味するものと認識 され、かつ、ありふれたものであり、識別力の希薄な部分である。 ちなみに、申立人は、「COACH/FACTORY」との表示を用いたファクト リー・ストアを運営している(甲14。又申立人の日本に係るウェブサイトに おいても申立人の商品が「コーチストアやファクトリー店」にて取り扱われて いる旨表示している(甲12)。)。 以上より、申立人の商標である「COACH」と本件ドメイン名2のうち 「COACH-FACTORY 」を対比すると、本件ドメイン名2は冗長であり、しか も「FACTORY」の識別力が希薄であることから、前半の「COACH」と後半 の「FACTORY」が分断されて称呼されることが多く、又、本件ドメイン名2 の前半の部分は、本件商標「COACH」とは同一又は類似のものである。 以上より、本件ドメイン名2の「COACH-FACTORY.JP」は、本件商標に、 全体として、混同を起こすほど類似していることは明らかである。 (ウ)結論 以上から、本件ドメイン名1及び本件ドメイン名2は、いずれも申立人が権 利利益を有する本件商標と混同を引き起こすほど類似していることは明らかで ある。 イ 権利又は正当な利益の欠如について この点については、登録者がドメイン名に関係する権利又は正当な利 益を有していることを少なくとも主張する必要があるが、登録者は答弁書を提 出しておらず,又回答書において本件各ドメインは、登録者のユーザーが「ス タードメイン」にて、「Whois代理公開サービス」を利用して取得したドメイ ンであり、登録者はドメインの運用に一切関与していないと主張しているので あるから、上記イの存在が推認される。 ウ 不正の目的での登録または使用 (ア)本件各ドメイン名を使用したウェブサイトについて 使用者は不明であるが、少なくとも平成23年9月7日までは、本件ドメイ ン名1を使用した「WWW.coach-outlets.jp」とのURLのもと において、「コーチアウトレット」との通販サイトを運営されていた(甲20)。 ところが、現在、前記「コーチアウトレット」のウェブサイトは、その内容 をそのままに、そのURLは本件ドメイン名2を使用した「WWW.coach- factory.jp」と変更されている(甲21)。具体的には、本件ドメイ ン名1を使用した「WWW.coach-outlets.jp」とのURLは、本 件ドメイン名2を使用した「WWW.coach-factory.jp」との URLに自動転送(リダイレクト)される仕組みとなっている。 そして、「WWW.coach-factory.jp」のウェブサイトにお いては、本件商標が使用されるなどしながら、申立人の商品の偽造品が販売さ れていると認められる。 すなわち、前記ウェブサイトにおいて、一見申立人の商品と見られる商品が 多数通信販売されている(甲19及び甲20)と認められるが、そこで販売さ れている商品は、申立人の商品の偽造品であり、真正品ではないと認められる。 すなわち、コーチ・ジャパン合同会社において、本件ウェブサイトにて販売さ れている商品のうち2製品を入手の上確認したところ、いずれも偽造品である ことが判明したと認められる(甲22)。 さらに、このように偽造品を販売する前記ウェブサイトにおいては、そのト ップページには、申立人が登録商標を有し、著名な、馬車及び枠付の本件商標 を組み合わせた商標(甲9)を使用しているほか、随所に本件商標等が使用さ れている(甲20及び甲21)と認められる。また、本件ウェブサイトのすべ てのページの左右には紫色をベースとして、「C」と「O」をあしらったデザイン が表示されている(甲20及び甲21)ところ、このデザインは、申立人の日 本に係るウェブサイトにおけるデザイン(甲12及び甲16)と類似している と認められる。 以上のとおり前記本件ウェブサイトは、申立人の偽造品を販売するのみなら ず、あたかも、当該サイトが申立人の直販店(アウトレット・ストア、ファク トリー・ストア)として商品の販売を行なっているかのような誤認混同を生ぜ しめることは明らかであるから、「商業上の利得を得る目的で、本件ウェブサイ トを利用して、申立人の商品と誤認混同を生ぜしめることを意図して、インタ ーネット上のユーザーを、本件ウェブサイトに誘引するために、本件各ドメイ ン名を使用しているとき」に該当するものと認定することが出来る。 問題は、「商業上の利得を得る目的で、本件ウェブサイトを利用して、申立人 の商品と誤認混同を生ぜしめることを意図して、インターネット上のユーザー を、本件ウェブサイトに誘引するために、本件各ドメイン名を使用していると き」の主体が、登録者の主張では、『本件各ドメインは、登録者のユーザーが「ス タードメイン」にて、「Whois代理公開サービス」を利用して取得したドメイン であり、登録者はドメインの運用に一切関与していない』と回答しており、実 際上の運用者は、登録者以外の者である可能性が否定できないが、前記③の要 件である『③ 登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されてい ること』は、ドメイン名の使用主体が登録者である必要は無く、登録者の名前 を借用した第三者であっても、ドメイン名の不正目的による登録及び使用とい う点では何ら差異はない。したがって③の要件の使用主体は特定する必要は無 いと考える。 以上より、登録者は本件各ドメインを使用していないと回答しているが、本 件各ドメインは、以上の事実から不正な目的で登録され、かつ使用されている ことは明白である。 7. 結論 以上に照らして、6.(1)により紛争処理パネルは、方針の第4条iに従っ て、登録者によって登録されたドメイン名「COACH-OUTLETS.J P」及び「COACH-FACTORY.JP」を申立人へ移転するものとし、 主文のとおり裁定する。 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 渡 邊 敏 単独パネリスト 2012年2月24日